ワークフローシステムとは?
ワークフローとは、企業内で行われる業務の一連の流れのことを意味します。組織が意思決定を行うためには、業務を担当する者が必要な申請・報告の手続きを行い、管理者が承認・決裁を下すプロセスが必要とされます。しかし、稟議書や経費精算などの目的によって申請の様式や方法が異なり、管理者が管轄する業務や決裁権限も変わってきますので、手続きの処理は非常に複雑なものとなってしまいます。
ワークフローシステムは、これらの申請・承認処理の流れを設定し、かつ手続きの流れを可視化して組織内で情報共有するシステムです。複数の申請様式を集約して統一的なフォーマットで管理することはもちろん、部門横断的な承認処理にも適用できるため、非コア業務に費やす時間を効率化し、企業の生産性を飛躍的に高めることができるのです。
ワークフローシステムの基本機能
ワークフローシステムは、次の基本機能により申請・承認のプロセスを効率化します。
(1)フォーマットの作成
稟議書や経費精算書、報告書、届出書など、申請に必要な書類のフォーマットを作成します。社内で適用する申請フォームを新規に作成することはもちろん、今まで社内で活用していた書面の書類・帳票類を電子化することもできます。最新のワークフローシステムには、申請者が設定された質問に回答すると必要な申請書が自動的に選択されるナビゲート機能を持つものもありますので、申請手続きは大幅に効率化されます。
(2)ワークフローの定義・可視化
申請・承認業務のワークフロー(どの申請をどのような手順で承認していくかの経路)を定義し、それに基づいて決裁種別や決裁ルート、各レベルの承認担当者、ステータス(申請、承認、決裁、差戻し)の管理を行います。ステータスはPC画面上に可視化されますので、申請者や承認者は自分がかかわる案件が現在どのレベルまで進捗しているかを随時確認することができます。
(3)業務系システムとの連携
企業で活用する業務系システムと連携し、申請・承認の手続きを効率化します。例えば人事システムと連携すれば、人事異動にともなう承認者の変更にも対応できますし、会計システムとの連携は仮払い申請や仕訳業務を効率化します。申請書に関連する書類を添付できる機能も装備されていますので、企業内の承認済み帳票類の整理・保管・検索の効率も大幅に改善されます。
ワークフローシステム導入のメリット
ワークフローシステムの導入は企業の生産性向上にどのように働きかけていくのでしょうか。具体的かつ実践的に、検証していきましょう。
(1)申請・承認業務だけでない大幅な省力化
ワークフローシステムの導入は、企業内のあらゆる部署で申請・承認業務に費やしていた時間と工数を大幅に削減します。今まで申請・承認に必要だった業務系システムへのエントリー工数の削減はもちろん、申請に必要な書類を素早く作成できる機能は非コア業務に費やす時間を削減し、進捗を確認できる機能は意思決定の迅速化も促します。スマートフォンやタブレット端末からワークフローシステムにアクセスする機能があれば、外出先からでもリアルタイムに承認を要する事項の確認が行え、スピーディなビジネス対応が実現されます。
次の図は、社員500名規模のある企業のワークフローシステム導入効果を1ヵ月あたりの業務削減時間で表したグラフです。一般にワークフローシステムの導入は申請・承認業務の省力化のみに働きかけると思われがちです。
しかし、この会社の庶務課では各部署の担当者や上司が提出する書面伝票をチェックして配送業務を行い、経理課では領収書や請求書に基づいて会計を処理していました。そして、全社で一括したデータ処理が行われることにより、庶務課で370時間・経理課で180時間もの大幅な業務効率化を実現しています。
ワークフローシステムの導入は申請・承認業務だけでなく間接部門の省力化にも効果があることがおわかりいただけると思います。
(2)業務精度の向上
ワークフローシステムの導入により、部署や拠点ごとに行われてきた申請・承認業務や書類のフォーマットを全社で標準化できます。これによりヒューマンエラーによる入力ミスや手続き上の不備などのリスクは回避され、業務の精度が著しく向上します。
(3)内部統制の強化
申請・承認業務の標準化は、企業の内部統制を強化します。ワークフローシステムにより申請・承認の履歴がシステム内に残されますので、業務手続き上の不正を未然に防ぎ、適正な業務運営管理が実効化されます。
(4)業務管理コストの大幅削減
ワークフローの導入により、今まで書面で対応していた書類・帳票類のペーパーレス化が進みます。これにより用紙代、コピーやプリンターの消耗品代、帳票ファイルの保管にかかわる経費などを大幅に削減することができます。
しかし、それ以上に大きなコスト削減効果は、人材資源(ヒューマンリソース)の生産性向上につながる様々な波及効果に現れます。社員が煩雑な申請手続き業務から解放され、管理者側の承認業務もスピードアップされることは、両者のモチベーションを向上させ、本来のコア業務への集中を促します。また、各業務の進捗状況と社員の負荷状況が可視化されることにより経営サイドにも適切な経営判断が促され、よりコストパフォーマンスの高い効率経営が実現します。
実際、100人の社員が書面で勤怠の実績と担当した作業にかかわる申請・報告業務を行っていたある企業からは、ワークフローシステムを導入し申請・報告業務をデータ入力に切り換えた結果、約75%の業務管理コスト削減効果があったことが報告されています。
ワークフローシステム導入時のチェックポイント
ワークフローシステムの導入にあたっては、次の4つのチェックポイントから自社の生産性を最大化できるシステムをご検討ください。
(1)自社業務との適合性
ワークフローシステム導入の目的は、「自社のワークフローをいかに効率化し、業務生産性を向上させるか」の一点に集約されます。例えば、申請・承認の業務処理が複数の部門を経由して行われる企業なら、作成した申請書間でデータ連携を行える機能を持ったシステムが求められます。また、パッケージの機能に合わせて業務の標準化を進める場合は、オンプレミスよりクラウドサービスを活用するほうが賢明です。自社のワークフローや帳票類のフォーマット、連携させる業務系システムの構成などを事前に調べ、最も適合性の高いワークフローシステムをお選びください。
(2)コストパフォーマンス
多機能なシステムを選べば、当然、導入コストは高くなります。必要な機能を絞り込み、拡張性の高いシステムを選択してスモールスタートすることが賢明です。導入費用の目安として、100人の社員へのライセンス発行で、予算は100万円前後(基本的な帳票類のフォーマット作成機能搭載/ライセンス更新は不要)となります。クラウドサービスの活用は初期コストが安価に見えてもランニングコストが高額になるケースが多く、複数年の利用を前提としたコスト比較が必要となりますので、注意が必要です。
(3)インターフェース
ワークフローシステムを導入しても、入力ミスや承認漏れが多発すれば業務の効率化は阻害されます。業務の進捗状況が直感的に把握でき、申請に関連する帳票類を添付しやすいインターフェースに優れたワークフローシステムの導入をお勧めします。外出先からの承認・確認作業が多い企業ならば、モバイルやスマートフォンへの対応機能は必須条件となります。
(4)セキュリティ
内部統制強化の課題からは、申請・承認などの権限設定やログ管理機能も重要なチェックポイントとなります。組織で規定した決裁ルートを逸脱した申請・承認が行われないように、単独承認の抑止やルート変更理由の入力などの操作の不正に対する細かい牽制ができるシステムをご選定ください。
最適化されたワークフローが企業を変える
あらゆる変化に対応して成長を続ける企業の活力は、人材資源(ヒューマンリソース)の最大活用によって生み出されます。企業にとって最適なワークフローの確立は、社員のモチベーションを向上させ、組織の迅速な意思決定を支援し、コア業務への集中によりビジネスの生産性を飛躍的に向上させていきます。
現在、ワークフローシステムが適用できる業務は広がりつつありますので、拡張性の高いシステムの導入により、みなさまが最適な人材資源の再配分を実現されることを願ってやみません。