ワークフローシステムは何の目的に使うもの?
稟議や申請、そして関連する報告書の提出などの情報のやりとりとそれにかかわる業務の流れをワークフローと言います。
従来、これらの業務は紙ベースで行われてきましたが、そこには下記のような課題がありました。
・決裁書類の紛失や、承認者・決裁者の外出・出張などで決裁処理が滞ってしまう
・書類の持ち回りに時間がかかってしまう
・起案申請書が誰の手元にあり、どこまで決裁が進んでいるのかわからない
・決裁された内容を他システムに反映するために手間がかかってしまう
ワークフローシステムは、申請・決裁業務を電子化し可視化することで次のような課題を解決するITシステムです。
ワークフローシステムでよくある機能とは?
一般的なワークフローシステムは、電子化と可視化につながる次のような機能を搭載しています。
(1)申請書作成支援機能
(2)承認・決裁ルートの定義機能
(3)Web画面の利用による申請・承認・決裁過程のワークフロー運用機能
(4)申請・承認・決裁過程の可視化機能
(5)他システムとの連携機能
(6)利用状況に関する分析・検索・運用レポートの出力機能
では、このような機能を搭載したワークフローシステムの選定では、どのようなポイントを比較すれば良いのでしょうか?
ワークフローシステム選定のポイント
ワークフローシステムは、大きく3つのカテゴリーに分類することができます。
そして、選定においては、各ワークフローシステム製品カテゴリーの特長や留意点などを踏まえつつ、ワークフロー基本機能、業務拡張性、実績管理、短期導入、規制・法改正対応という5つの軸から、どこに重点を置くことが自社の目指す方向に合致しているかを検討すると良いでしょう。
(1)ワークフロー専門型
概要と特長
ワークフロー(承認機能)に特化した“ワークフロー専門型”は、稟議書から精算書、人事系、総務系、その他、様々な業務を含めた複雑な申請・承認決裁業務に対応しやすい製品です。また、業務適用への柔軟性が高く、様々な業務を共通のワークフローシステム上に構築できるため手続きの一元化による業務効率化を実現することができます。ほかの2つと比較した場合、“ワークフローの基本機能”の豊富さや、“業務拡張性”が優れています。
他システムとの連携性
任意の中間ファイルや、仕訳出力、XML出力などでのデータ連携が可能です。
留意点
機能性や拡張性が高い反面、日報だけをワークフロー化したいなど単機能での導入の場合には、機能過多となり使い勝手を損なってしまう可能性があります。
(2)基幹システム型
概要と特長
“基幹システム型”は、基幹システムのオプション機能として提供されています。基幹システムとリアルタイムでのデータ連携が可能であり、このカテゴリー製品の最大のメリットとなっています。
他システムとの連携性
基幹システムとはリアルタイムでの連携が可能で、例えば、決裁の過程での経営指標の確認や勘定系に関するチェックを行うことが可能です。
留意点
ワークフロー機能や業務拡張性については、3つのタイプの中ではもっとも機能がシンプルであり、導入目的に照らして機能が十分であるかどうかを事前に確認しましょう
(3)グループウェア型
概要と特長
ポータルやスケジュール管理機能などグループウェアの一部の機能として提供されているワークフロー機能が“グループウェア型”です。ほかのカテゴリーの製品に比べて価格が安く、ある程度標準化されたワークフロー機能を短期間で導入できることが特長です。また、グループウェアの特性から、ASPやSaaS・クラウドなどのサービスが充実しているというメリットもあります。
他システムとの連携性
ワークフロー利用の過程で、グループウェア上の関連情報は表示できますが、基幹システムなど他システムのデータとの連携では、その抽出や管理面での工夫が必要になります。
留意点
短期間での導入は可能ですが、拡張性は限定されています。利用が進み、より高度な機能が必要になった場合、ほかのカテゴリーの製品と併用することを視野に入れておくことも必要でしょう。
例えば、申請・決裁手続きなどワークフロー基本機能、基幹システムデータをリアルタイムに利用できる実績管理、あるいは短期導入のいずれを重視するかによって、さらに詳細を検討すべきカテゴリーが決まるはずです。
オンプレミス型とクラウド型、どちらを選ぶべき?
また、最近ではオンプレミス型に加えてクラウド型のワークフローシステムも提供されています。
ワークフローシステムの利用目的が「旅費精算や勤怠管理のようにシンプルでフォーマットが決まっている機能」だけであれば、クラウド型でも良いでしょう。しかし、複数の業務をワークフロー化する場合にクラウド型を選択してしまうと、かえって非効率となってしまう可能性があります。クラウド型のワークフローシステムはカスタマイズなどの柔軟性が低く、単一の基盤の上に複数のワークフローを統合することが困難であるため、業務ごとに複数のワークフローが必要となってしまうからです。
一方で、オンプレミス型のワークフローシステムは、カスタマイズし各業務システムにつなぎこむことで単一の基盤の上に複数のワークフローを統合することが可能です。そのため、基幹業務を含めた複数のワークフローを検討するのであれば、柔軟性があるオンプレミス対応のワークフローシステムの利用が有益と言えるでしょう。
冒頭で述べた通り、申請・決裁処理は重要な業務です。その業務を電子化し可視化するワークフローシステムが、日常業務に与える影響は小さくありません。だからこそ、今回ご紹介した3つのカテゴリーと5つの軸をベースに、自社にとって最適なワークフローシステムを選定するように心掛けましょう。